鍵にまつわる二つの話

鍵にまつわる面白い経験をいくつかしました。それはあるバーに連れて行かれたときのことです。トイレに行こうとしたのですが、トイレが見つかりません。そのバーは古いアパートを改造して営業している不思議なつくりのバーであるため、そもそもトイレが無いのかも知れません。そうは言っても自然現象を止めるわけにはいきません。その店の店長と思しき人にトイレの有無を聞くと、鍵を渡されたのです。そして戻る時は施錠してくるようにと言われたのです。トイレはその古いアパートの共同トイレでした。恐らく外部からその古いアパートに入ってきた人が勝手にトイレを使わないように施錠してあるのでしょう。それにしてもトイレの個室ならいざしらず、トイレ自体に鍵がかかっているのは初めて見ました。鍵をあけて用を足してまた鍵を閉めてバーへ戻ったのです。なんだか何かの儀式のようでした。もうひとつの鍵にまつわる面白い話は知人に聞いた話です。彼女がスーパーで買い物をして車に戻り、自分の鍵を使って車のドアを開け、スーパーの駐車場を出て赤信号で止まるのと同時にパトカーに囲まれたというのです。交通違反は何もしていないはずですが、流石に怖くなって固まっていると、その時後部座席で赤ん坊が泣き出したというのです。独身の彼女には何がなんだか分からなかったようです。ただ、とにかく誘拐犯に間違われていることは確かなようでした。しかし、彼女はもちろん赤ん坊の誘拐などするわけはありません。その事情が分かり、無事彼女は釈放されたのですが、たまたま同じ色で同じ車種に乗る二人の女性が同じ時間にスーパーマーケットに立ち寄ったことから事件は始まったのです。通常、ありえないことなのですが、彼女がドアを開けたのは、他人の車のドアであり、不幸にもそのドアが自分の鍵で開いてしまったというのです。そうして彼女は誘拐犯と間違われたのですが、別な車の鍵が違う鍵で開くことが本当にあるのかは今も不思議です。